食と、東北と、編集長
佐藤仁
食の楽しみ方
fishguitar”食”というものは非常に幅が広く、「新鮮」「美味しい」「香りがいい」という食べ物本来の性質を楽しめることはもちろん、時には”デザイン”や”アート”という形で人々を楽しませてくれます。
またその種類は様々で、野菜、肉、魚など多くの分類が存在します。今回その中から注目したいものが魚。刺身や煮魚、焼き魚などその食べ方は様々ですが、今回は少し違う視点から魚に注目していきたいと思います。
魚はデザインにも!
魚は食べるだけではなく、時にはデザインの題材になることもあります。魚をモチーフにしたTシャツやアクセサリー、キーホルダーなどを見かけたことがある方も多いはず。そんな魚アイテムのデザインをしている方がなんと東北地方に!今回はその方に突撃インタビューしてきました!
魚をギターに?フィッシュギターの世界
今回ご紹介するのはフィッシュギターの世界さんです。その名の通り、魚を題材にギターのデザイン案を作成している方です。本記事では、フィッシュギターの世界さんへのインタビューや SNSへの投稿から、そのユニークな発想がどのように生まれるのかを探っていきたいと思います。
どんな取り組みなの?
さまざまな魚のイメージをギターに。こうしてできたものが“フィッシュギター”です。
フィッシュギターの案を作る際は、魚が持つ個性とギターの特性の2つを、なるべくリンクさせられるように意識しています。エレキギターは多くの種類があり、形だけではなく音にもそれぞれの特性がありますので、単に魚とギターの形が似ているからという理由だけに限定してデザインするのはもったいなく感じてしまいます。なので、例えば食べたときに旨味が強く後を引くのが印象的な魚は、サステイン(音量の維持)が長い特性を持ったギターにするといった、そういった関連づけをするように心がけています。これを考えるのが楽しいんですよ。もちろん、魚やギターにはいろいろな側面がありますので、この関連づけは半ばこじつけのようなものなのですが、ブログを読んでくださった方に楽しんでいただきたいポイントであることは間違いありません。また、魚をギターのモチーフとすることが、魚に親しむための一助となるのであれば非常に嬉しいです。
いろいろ質問してみた
はじめまして!今日はどうぞよろしくお願いします!
こちらこそよろしくお願いします!
それでは早速ですがいろいろと伺いたいなと…。まずはご自身とギターとの関わりについて教えてください。
私がギターを初めて手にしたのは14歳のとき。両親にフォークギターを買ってもらった時のことでした。当時は路上ライブが流行りだったこともあり、フォークギターで弾き語りをやってみたかったんですよね。私が初めて手にしたフォークギターはHeadwayというメーカーのもので、色はサンバースト、大きさは少し小さめでした。価格は1万円程度と、ギターとしてはかなり安い部類に入りますが、当時の私にとってはまさに宝物で、時間を見つけてはずっとギターを触り続けていました。
小さい頃からギターには馴染みあったんですね
そうなんです。それからだいぶ時が過ぎますが、27歳の時には自分でエレキギターを買いました。テレキャスターという種類を選び、ターコイズブルー色のものを購入したのですが、このギターを選ぶのはかなり悩みました。というのも、エレキギターはフォークギター以上に様々な形状、サウンドのものがありまして、テレキャスター、ストラトキャスター、レスポール、ジャズマスター、ジャガー、ムスタングなど、多くの機種があるんです。この時初めて「エレキギターはこんなに種類があって奥深いものなんだ…」と知ったんですよね。
なるほど。小さい頃からギターに親しんでいたこの経験が、きっと今のご活動に繋がっているんですね。
それでは次に、ご自身と魚の関わりについて教えてください。
はい。私は幼い頃から魚が大好きでした。通っていた幼稚園や小学校近くの池でコイがたくさん泳いでいるのをじーっと眺めていたり、また盛岡はサケの放流が盛んだったため、授業の一環として放流を体験したり…そんな魚に触れる機会が多くあったからか、魚が大好きだったんですよね。
(私も魚好きです…) ※編集長はスーパーで水産の仕事もしています
その気持ちは未だ薄れず、大人になった今でも、釣りに行ったり、近所のスーパーの魚売り場に行ってみたり…とにかく魚が好きなんです。
ありがとうございます。私も水産系の仕事をしているので、その気持ちはとてもわかります。しかしなぜギターと魚が結びついたのでしょうか?
きっかけは好きなバンドのライブ映像を見ていた時のことでした。コロナウィルスの影響で、ここ数年「おうち時間」が長くなっておりまして、ある日、好きなバンドのライブ映像を見ていたんですよね。そのバンドでギターを弾いているメンバーの1人が、首から白色のギターをさげていました。照明の色が赤や青、オレンジや緑色、そして黄色へと変化する度に、そのギターの色は光の反射により様々な色に見えたのですが…そのとき、頭の中に閃光のようなものが走りました。「これは、、、、魚だ、、、、!」とっさにそう思ったのです。そのギタリストの方が、首から魚をぶら下げているイメージが頭に浮かびました。
何かが降りてきたんですね(笑)たしかにギターも多種多様、魚も多種多様ですので、組み合わせは無限に考えられそうですし、デザインを考えるのはおもしろそうですね!ちなみに、現在様々なデザインを制作していると思うのですが、今後こんなことをしたいという展望はありますか?
「フィッシュギターにできる魚は、私が直接手に取ったことがあるものだけとする」というルールを自分の中で定めております。つまり、実際に触れた魚の数が増えるということは、それだけデザインできる魚の数が増えるということですので、まずはいろいろな魚に接する機会を設けていきたいですね。様々な理由により市場にあまり出回らない魚を「未利用魚」と呼んだりしますが、実は通常では手に入れにくい魚をランダムに詰めた、未利用魚BOXというものが通販で買えるんですよ。私にとっては宝箱のような存在で、魚種を増やすために上手く活用しているところです。また、私は生まれてこの方ずっと東北に住んでおりますので、このブログを通して東北の美味しい魚、魅力的な個性を持つ魚を紹介したと思っております。東北の魚には愛着があるので、デザインする時はいつも以上に気分が乗りますね。
現段階ではデザインの制作だけに留まっておりますが、いつかフィッシュギターを作って自分で演奏できる可能性があればと考えると、それだけでワクワクします。とはいえ、演奏してみたいフィッシュギターが多すぎて、1本に絞るのが難しいところですが...(笑)さらに、もしもギターとして形になった場合、バンドマンの方にライブで使っていただけたら最高ですよね。魚が好きなバンドマンの方ならなおさら嬉しいです。
魚のギターを使ったバンドの演奏を聴けるのはめちゃくちゃおもしろそうです。楽しみに待っています!本日はお忙しい中、ありがとうございました。
フィッシュギターの世界さんの日常を見てみよう
フィッシュギターの世界さんのSNSからその日常が垣間見えるのですが…ご本人は無意識かもしれませんが、「すごい」と思わされることがたくさんあります。もしかしたらこれが魚×ギターという発想の根源かも?ここでは、その日常の姿をいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
とにかく魚を食べる頻度が高いです。気付くと魚料理の写真をアップしており、「この人…毎日魚食べてるんじゃないか…」と思わざるを得ないほど。しかも毎度めちゃくちゃ美味しそうな料理。
一般的にはあまり食べられず、特定の地域でのみ食べられているような魚、またいわゆる未利用魚と呼ばれる魚など、「東北地方では見たことないんですが…」という魚をよく食べています。その勇気と開拓心に脱帽です。とある日には、Twitterにこんな投稿も。
探究心がすごすぎます(笑)
熱帯魚のような変わった魚ばかり食べているかと思いきや、普通に料理もされているフィッシュギターの世界さん。というか料理がめちゃくちゃ上手です。食材の味や性質を知らなければ美味しい料理は作れません。きっとそういった食への探究心も、魚をギターにするという発想へ影響を与えているはず?
以上から垣間見えるのは、フィッシュギターの世界さんの魚や食に対する圧倒的な探究心。といっても、きっとこれはフィッシュギターの世界さんにとっては当たり前のこと。日常的に身の回りに「魚」というものが存在し、大好きな「ギター」が存在し…それがあるタイミングで結びついて「魚をギターにする」という発想に至ったのかもしれません。自分の好きなことは徹底的に全力でやってみる…そういった姿勢は見習うべきものがあると感じた次第です。
【まとめ】「好き」を極めたその先に
スマホから多様な情報が入ってくる現代の世の中。あまりにも多い情報量は、便利である傍ら、時たま人々を困惑させることもあります。そんな世の中でこんな声を聞くことがあります。
「やりたいことがわからない」
「自分の好きなことがわからない」
みなさんは自分が「好き」と思えることをお持ちでしょうか?最近は「自分のやりたいことがわからない」という若い方も少なくないですが、きっと”嫌いではないこと” ”興味のあること”は何かしらあるはずです。
個人的な見解ですが、最近の世の中は「生きづらいなぁ」と感じることがゼロではありません。例えば、自分の好きなことをやっていても、人間関係がうまくいかなくてやめた、誰かに批判されてやめたなど、様々な要因で自分の”好き”をあきらめてしまうこと、諦めざるを得なくなってしまうことがあります。でも、自分の”好き” “嫌い”に周りなんて関係ないし、好きならとことん突き詰めてやっちまえ!と思います。あの人にああ言われたから…とか、否定された…とか、そんなの関係ありません。自分が好きならそれでいいじゃないですか。今回、フィッシュギターの世界さんのお話を聞きながらそんなことを考えていました。
自分の好きなことをとにかく極めていく。きっとそれが新しい発想やアイディアに結びつく可能性を生むのではないでしょうか。魚が好き、ギターが好き。きっとそれが新たなフィッシュギターの世界というものを生んだのではないでしょうか。
著しい人口減少や少子高齢化など、多くの社会問題を抱える東北地方では、今後そういった発想力がとても重要なものになる気がします。