【取材】妊娠と食生活 | 岩手県在住の性教育研究家に気になることいろいろ聞いてみた

食と、東北と、編集長

佐藤仁

はじめに

女性にとって20〜30代の時期は、結婚・妊娠・出産など様々なライフイベントがある大切な時期。

この時期は、普段何気なく送っている食生活も特に重要視すべきタイミングとなります。

「妊娠中に食べていいものは?」
「妻に、妊娠中食べさせてはいけないものは?」

普段知ったり、相談する機会がなかなかない妊娠中の食生活について、今回は性教育研究家の方にお伺いする機会をいただきましたので、まとめていきたいと思います。

性教育研究家ねじねじさん

Profile

ジェンダー・性教育研究家ねじねじ

*出身 秋田県大館市

*在住 岩手県盛岡市

*経歴等

 ・秋田県大館市にて保育士として5年間勤務
 ・小学校特別支援教育支援員を経験
 ・盛岡市役所生活保護世帯中高生就学支援相談員を経験
 ・[ 現在 ] ジェンダー・性教育研究家として幼児期〜高校生に向けた性教育を実施
 ・秋田県若者活躍プラットフォーム推進事業「あなたラボ」3期生

*特技 秋田弁

*苦手 とっさに左右を判別すること、7の段

*HP https://nejineji0831tabeyo.wixsite.com/nejineji-activity

性教育って何?

まず初めに…ねじねじさんが現在取り組んでいる性教育とは一体どのようなことを指すのでしょうか?
性教育とは、人権教育の1つです。

これを私がやろうと思ったきっかけは、男女間やトランスジェンダーの人たちに対して差別や区別が行われていないか疑問に思ったことでした。
1人1人がきちんとした知識を持っていれば、差別・区別はなくなるのではないか?と思ったんですよね。

性は、性自認、身体の性、表現(ファッションなど)、性的指向の4つで形成されると言われています。
どんな性を持っている人でも、差別されないような教育が必要だと考えています。
現在幼児期〜高校生という若い方々を中心に性教育を行っているのはなぜですか?
性教育は、生殖といった生物学分野も学ぶ、広くて深いものです。

これは一朝一夕に完了するものではないと思っているのですが、大人になる前に正しい知識を身につけることによって、誤ったジェンダーバイアスや凝り固まった偏見をなくすことができるのではないかと考えています。
これによって、大人になったときに常識として、自分の身を守り、大切な人を守れるのかなと。

実は、国際的には小さい頃からの性教育は推奨されていて、国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、5歳から性教育を始めることが推奨されています。
小学低学年・高学年、中学、高校の4段階で教育内容の指針が細かく示されていたりするんですよね。
3歳で性教育の指導を始める外国の地域もありますし。

ただ、日本は外国に比べて性教育指導が遅れています。
小中学校では性教育を控えなければならない風潮があったり、保健専属ではなく、”体育”の先生が性教育を行わなければならない教育現場の現状があったり、原因は様々ですが小さい頃にきちんとした指導ができていないことが現実問題あります。

もっと早い段階から、正しい知識をまっすぐ吸収してほしい…そんな想いで活動に取り組んでいます。
具体的にどのような活動をされているのですか?
性教育に対するハードルの高さを低くしたいという想いから、幅広い年代の方に向けたワークショップを実施しています。
クイズなど、みなさんが参加しやすいワークショップにできるよう努めています!

妊娠について

「妊娠」に関して、日本では”予期せぬ妊娠”が社会問題になることが度々見られます。このことに関してどのような性教育が必要だと考えていますか?
当然ですが、妊娠は1人ではできません。ですので、男女一緒に等しく教育をすべきだと考えています。
互いに身体面、精神面について深く理解し合う必要があると思います。

また、子どもだけではなく、大人の教育も必要です。
予期せぬ妊娠をしたときの、当人に対する不当な差別を防ぐことは現代の大きな課題です。
そして、制度についても今一度考え直す必要があるかと。中絶・出産のどちらも安心して選択できる制度は、今の日本に足りない部分です。海外に比べると、無痛分娩はスタンダードではないし、中絶薬は認められていないし…出産に対するハードルは高いのが現状です。

※2023年4月28日、厚生労働省は国内で初めて経口投与の人工妊娠中絶薬であるメフィーゴパック(ミフェプリストン/ミソプロストール)を承認しました。今後厚生労働省が正式に承認の手続きを行う見通しです。

※以下、厚生労働省「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考にしています。

妊娠と食生活

妊娠期における食生活の基本

妊娠期に限るという話ではありませんが、バランスの良い食生活が基本となります。主食、副菜、主菜、乳製品、果物の5つをうまく組み合わせるとバランスが取りやすいです。

積極的にとるべき栄養素

たくさんあるのですが、その中から特に大切な栄養素を3つ列挙します。

①葉酸

葉酸は妊娠中はもちろん、妊娠前から摂ることが重要とされています。摂取することで、神経管閉鎖障害のリスクが減少します。緑色の野菜から摂取可能です。

例)モロヘイヤ、ブロッコリー、アスパラ、ほうれん草、枝豆、いちごなど

②鉄分

母体から赤ちゃんに栄養を運ぶのは血液であり、そのため妊娠中は3倍以上の鉄分が必要とされています。鉄分の吸収を助けるタンパク質やビタミンCも一緒に摂るとなおよしです!

例)牛肉、あさり、納豆、小松菜、ナッツ、海藻など(牛肉は火をしっかり通すこと!生はNGです)

③カルシウム

日本人女性に不足しがちな栄養素であるカルシウム。お腹の中の赤ちゃんに不足分のカルシウムは、母体の骨から摂取されてしまうので、丈夫な骨を保つ意味でもしっかりととりましょう!

例)乳製品、小魚類、大豆製品、緑黄色野菜、海藻類など

摂りすぎ注意な栄養素

①ビタミンA

妊娠初期にとりすぎると器官形成異常の可能性が高まります。

②ヨウ素

不足してもとりすぎても良くない栄養素。日本人は取りすぎる傾向があるため、どちらかというと控えた方がいいかもしれません。うがい薬や昆布出汁にも含まれているので注意。

③水銀

食物連鎖の過程で濃縮される成分。下記食材の摂取には気をつけましょう。

例)キダイ、マカジキ、ミナミマグロ、金目鯛、メカジキ、メバチマグロなどの魚(1週間に1/2〜1切が目安)

④その他NGなもの

アルコール、タバコ、カフェイン、生もの(刺身、寿司、生ハム、スモークサーモン、ナチュラルチーズ、肉魚のパテ)などはNGです!

幼少期と食生活

最後に、幼少期の食生活に関するアドバイスについてお話しします。

完全にNG!食べてはいけません!

・ハチミツ

0歳の子にハチミツはNGです。殺菌処理でも死滅しないボツリヌス菌が含まれている可能性があるためです。大人の体で倒すことはできるのですが、0歳にはできません。

・チョコレート

虫歯などを考慮し、チョコレートは3歳までNGです・

・豆類

窒息の恐れがあるため、5歳以下には豆類は食べさせないようにしましょう(消費者庁からの注意喚起もあり)。

控えめに!推奨はできません

・味の濃いもの

離乳食期・幼児食期に味の濃いものになれると、薄味のものでは物足りなくなります。

・刺激物等

上記と同じ理由です。味蕾の数は大人と子供で同じなのですが、大人の方が舌が大きいため鈍感に感じ、小さい子は刺激に敏感となります。